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脈診 のヒント
藤井です。こんにちは。三日月では治療の際、
脈診
をさせていただいています。
脈診とは、身体をめぐる経脈(気血が流れるルートで、五臓六腑の経に心包経を加えた12経)の拍動を触れることによって、その身体の状態を推測し、各臓腑の陰陽虚実やバランスなどを調べ、病気の診断や予後の判定を行い、治療方針を立てる方法です。東洋医学の専門用語がたくさん出てきますが、今日のヒントノートは「脈診」について考えてみました。
六部定位診(ろくぶじょういしん)
現在、古典に則った脈診法としては最も広く行われている法である。術者と患者様が向かい合って座り、術者の中指を病人の橈骨茎状突起のすぐ内側にある橈骨動脈の拍動部に当て、人差し指・薬指を軽く添える。このとき人差し指の当たる部分を寸口(すんこう)、中指の当たる部分を関上(かんじょう)、薬指の部分を尺中(しゃくちゅう)という。 患者さんの左手の寸口・関上・尺中が指を浮かせた状態で小腸・胆・膀胱、沈めて心・肝・腎、
右は浮かせて大腸・胃・三焦、沈めて肺・脾・心包(命門)を調べる
脈の動きは、周りの環境から影響を受けやすく、脈診だけでその人の状態を判断することはできない。
痩せた人(皮下組織が薄い人)は浮脈になりやすいし、太り気味の人(皮下組織の厚い人)は沈脈になりやすい。
子どもは数脈になりやすく、訓練をつんだスポーツ選手は遅脈に、妊婦は滑脈になりやすい。
春は弦脈、夏は洪脈、秋は浮脈、冬は沈脈になりがちであるが、これは身体の順応と考え、多少の脈の変化は正常と考える。
もちろん、エアコンなどの冷暖房、その場所の湿度、女性では月経によっても脈は変化する。
平脈 一般的な、健康な状態の脈のこと。
成人では一息四至(一呼吸に4拍)といわれ、これは1分間におよそ72~80拍(15秒で18~20拍)の拍動にあたり、リズムは常に一定である。
乳幼児の場合は、120~140回/分、5~6歳では90~110回/分くらいが正常である。
浮でも沈でもなく(力を入れなくても脈が取れる)、緩やかで力がある。
平脈は理想の状態である。
浮脈 表証・虚証 軽く指を当てて触れられるが強く押してしまうと消えてしまう状態。
表証や虚証のときに現れる。
脈が浮いたように浅く感じるのは、外邪が経絡に侵入して間もなく、肌表または経絡上のまだ浅い部分に存在しているためである。
浮脈でも、脈が強く感じられる場合は表実証、脈が細く感じられる場合は表虚証である。
痩せている人は皮下組織も薄いため、浮脈になりやすい。
沈脈 裏証 軽く触れても感じないが強く押すと感じる沈んだ脈。
裏証のときに現れる。
沈脈でも、外邪や内生の邪が臓腑を冒し気血の流れを阻害している場合(裏実証)は力強く感じ、臓腑が虚である場合(裏虚証)は弱く感じる。
太っている人は皮下組織が厚いため、沈脈になりやすい。
遅脈 寒証 平脈よりもリズムが遅い脈。一呼吸に三拍以下の遅い脈
通常、成人で一息四至に満たず、1分間におよそ60回未満(15秒で15拍未満)の拍動であれば遅脈と言われる。
寒証のときに現れる。
脈が遅くなるのは、寒邪・内寒によって陽の気の巡りが阻害されることで遅くなる。
遅脈でも、寒邪・内寒の影響によるもの(実証)では力強く、正気の不足(虚証)であれば弱く感じる。
訓練を積んだスポーツ選手は遅脈になりやすい。
数脈 熱証 平脈よりもリズムが早い脈。一呼吸に六拍以上の早い脈
通常、成人で一息五至以上で、1分間におよそ90回以上(15秒で23拍以上)の拍動であれば数脈と言われる。
熱証のときに現れる。
熱邪・内熱が盛んな場合(実証)は力強く、陰虚である場合は細く感じる。
子どもはやや数脈で正常であり、また身体を動かした直後は数脈になる。
洪脈 内熱・熱盛 脈動が大きく、幅広く感じる脈。
「大脈」とも言われる。
内熱があるときや、熱盛の時に現れる。
夏期は洪脈になりやすい。
細脈 気血両虚 脈動が小さく、細く感じる脈。
気血両虚のときに現れる。
冬期は細脈になりやすい。
滑脈 痰飲・食滞 ころころと滑らかに転がるような脈。
痰飲(水湿が停滞して流れが悪くなっている状態)や食滞(飲食物が消化されず胃などに滞っている状態)のときに現れる。
また、実邪(体内にある余分な成分)が充実し、気も充実しているときに起こる。
ただし健康な人でも、栄衛が充実しているときに現れることがあり、脈数が安定していれば異常ではない。
妊婦にも見られる脈で、妊婦の人の脈に触れるとよくわかる。
渋脈 気滞・血オ・精気不足による血虚
滑らかではなく、引っかかって抵抗があるような脈。
気が滞っている(気滞)ため血も滞っている(血オ)ときは力はあるが渋る脈となる。
精気が傷つけられることによって起こる血虚状態であれば、力なく渋る脈となる。
虚脈 虚証・気血両虚・臓腑の虚
脈を強く圧すと止まるような、弱々しい脈。
浅い所も深い所も触って力弱く感じる脈。
按圧している指を力強く押し返してくる力のない脈。
気虚による推動作用の不足、血虚による脈中の血が不足、またはその両方の原因により起こる。臓腑が虚であるときにも現れる。
実脈 実証 脈を圧しても力強く跳ね返してくるように感じる脈。
浅い所も深い所も触って力強く感じる脈。
外邪が強く、正気も強ければ、両者の闘争が起き、脈が力強くなる。
長脈 陽盛・内熱 寸・関・尺を超えて脈が取れる状態。
陽盛および内熱があるときに現れる。
短脈 気の不足・気鬱 寸・関・尺に届かず脈が取れない状態。
気が不足していたり、気鬱のときに現れる。
弦脈 肝胆の病・動脈硬化・高血圧
弓の弦に触れているような、ピンと張りつめたような脈。
肝・胆に病があるとき、動脈硬化・高血圧のときに現れる。
春期は弦脈になりやすい。
緊脈 寒証(痛証)
引き締められたような、緊張したような脈。
寒証による痛みがあるときに現れる。